熱い夜…回顧録
 Honey 2003/08/05(Tue) No.2072


今日は天気もよくて、絶好の野外コンサート日和☆ 日が落ちると海風が心地いい涼しさを運んでくれる。 何万という人のざわめきと熱気、野外ならではのワクワクが胸を高ぶらせていく。 「あゆかわい〜ね♪」 「最高!しゃーっ!いくぞ!」 今、飛ばなきゃ、いつはじける!? 「いいかぁ…よーく聞けよ!」 「なに?」 「地球の終わりとばかりに飛べ!」 ウォ〜ッ!すごい歓声と地響きの中、2人はしゃいだ。 おかげで、服をしぼれるほど汗だく… 「悪いけど、気合いだけは負けられん!」 「本当元気だよね〜」 「そんなにほめんなって♪」 ここぞとばかりに大暴れして、クッタクタのフラフラで暗い帰り道を歩く。 「あ〜きつい〜」 「あんなに暴れたら当然です〜」 「おんぶして〜」 「いーやー」 「ケーチケーチ…」 「うるさいで〜す」 「ばーかばーか」 「またお子ちゃまになる〜…ケチもバカも1回でいい!」 「はい…こわーい」 2人でいると、話がはずんでとぎれない。馬鹿話しだけど、胸の中はなんとも言えずウキウキしている。 「裕美子、ほら〜空、見てみ」 「うわぁ…綺麗〜」 「ねー?星が綺麗やろぉ?」 「うん」 「感動するやろ〜?」「うん」 「へへ…」 「なに〜?笑って…」 「だって裕美子がかわいいもん」 「何それ?」 「かわいいからかわいい☆」 「あっそーですか」 「うん。やからぁ〜…チューしていい?」 「だめー」 「けちー…いいやん」 「だめー」 「ちょっとだけ☆」 「いやー」 「むかつく!じゃあ、乳もませろ!」 「意味わからーん」 「はははっ…」 もう何年も、いつもこのやり取りの繰り返し。 過去に2回くらい、いい感じになった時があった。 だけどそれはとても大切な思い出で、いつも胸がキュンとする思い出をつくろうとして、その先に進めなくなる。 あの夜も、星が綺麗だった。 野暮用の帰り道、裕美子の運転で近くの丘まで足をのばした。 「ねー、ここからでも星バリ綺麗やろぉ?」 「うん…」 さっき、運転中にふざけて手をつないでから、裕美子の態度が少しぎこちない。 「ばーか…なんにもしないよ」 おでこにコツン☆とゲンコツくれてやった。 そう意識されると、よけいに胸がキュンとしてくる。 こんな時はいっそその場で、すぐにでも友達の仮面をはずしてしまいたくなる。 「そんな警戒すんなって…」 「……」 言葉もなく、潤んだ瞳で上目使いされると、どうしようもなくなる… 「あーもう…だからさー、そんなかわいい顔すんなって言ってるだろ〜?」 「なにが?」 「何がじゃないやろ…ばーか…」 「……」 裕美子はこんな時、ちっとも話せなくなる。 何気ないふりをして、裕美子が手を入れてる右ポケットに左手をつっこみ、手をつないだ。 「流れ星…流れるかな…?」 「…かな」 「ふふ…ばか」 「なんで…?」 「今更照れんな…」 「なにがよ…」 「いつも言ってる…好きだって…」 「……」 「気持ち知ってるくせに、冷たいんだよねー裕美子は…」 「うるさい」 「はは…こわっ」 空を見上げたまま話す… 「やっぱ…裕美子はそうでなきゃ…」 「……」 「暴れん坊やん?」 「そーよ」 「ははは…怖い怖い」 「うん…」 「あー…流れ星、流れたらキスしていい?」 「いや」 「ほら、お星様って願い叶えてくれるって言うやん?」 「はいはい」 「じゃ、キスしてもいい?」 「ダメ」 「くそー…流れ星流れるように祈ってやる」 「なにそれ」 「…なんだろ」 「ははははっ…」 話しの内容なんて、くだらなくても構わない。 2人でこっそり手をつないで、照れながら星空をみあげる静かなこの時が、いっそこのまま止まってしまえばいい… 裕美子はいつも、手をのばせば簡単に心にも体にも手が届く距離にいた。 だけどそうしないのは、手が届きそうで届かない星が一番綺麗で… そんな風にいつも追い続けていたいから… 「ヘッドロック☆生意気だぞ」 「へへーんだ」 「襲うぞ!」 「こわーい」 「そんなカワイ子ぶってもかわいくない!」 「ふふ…」 「あんまり知らんぷりして焦らすと…他の子にいっちゃうよ?」 「いーよ…」 「…嘘つけない奴が嘘つくな…」 「……」 「淋しいくせに…」 「全然…」 「素直じゃない…」 そっと抱き寄せ、後ろ頭にキス… これで精一杯… 「帰ろっか…」 「…うん」 手を引いて薄暗い石段を降りる。 「あ…流れ星!」 「嘘!?」 「見た?」 「見れんかったぁ〜」 「あほ〜!キスできんやろ!」 「あはは…」 車に乗り込んで発進…私の家までもう少し。 「あーあ…裕美子」 「なに?」 「もうお別れやん…」 「淋しい?」 「うん…」 「今度はだだっ子?」 「うるせー」 「あはは☆はい到着」 「ありがと」 「よしよし…」 頭なでなでされた。 「もーっ!子供扱いするなぁ!」 「うちの甥っ子と一緒やもんね」 「ちがうもん!」 笑いながらほっぺたつつかれる。 「もういーよ!早く帰れ!ばかぁ…」 「それでいいと?」 「いやだ…」 クスクス笑われるのも心地いい。 頭はって人に指示出して、気を張ってやってる時には、いつも何も言わなくてもわかってくれて、 影で先に動いて守ってくれる裕美子。何度助けられたかわからない。 熱くて時には厳しくて、雷落として泣かせてしまった事も数え切れない。 だから築いてこれた誰よりも固い絆。 だけどこうやって2人でいる時には、ちゃんと甘えさせてくれる。 「甘えん坊やねー」 「いいっちゃもん…」 「よしよし…かわいーねー」 「ニャ〜…猫になりたい…」 「機嫌よくなった?」 「うん☆」 「よかった」 このこぼれる笑顔がたまらない… 長谷川京子と辺見えみりを足してセミロングにした感じ☆ 「引き留めてごめん…気をつけて帰れよ」 「うん…わかった」 車を降りて運転席の方へまわる。裕美子は窓をあけて小さく手をふってる。 窓から中に腕をのばして、頭なでた。 「おやすみ…」 「おやすみ」 「今度は…一緒に流れ星みような」 「うん」 「窓、閉めろ」 「うん」 窓がしまると、冗談めかして目を閉じて、窓に口を近づけた。裕美子も笑って真似をする。 窓越しにそっと優しいキス… …もう少しだけ、このままで… そう思っても、1秒1秒、時間は過ぎていく。 もう少しわがままになれば、この腕の中に抱いてしまえるのに… そうであっても、自分より相手の気持ちを大切にしたいと思えるから… そう思わせてくれる程大切にしたい、たった一人の人に出会えたから、今はもうこれ以上を望まない。 『バイバイ…』 お互いに微笑みあい、手を振って別れた。 最近は、こういう数年のボディーブローが効いてきてるみたいで、ガードが甘くなってきてる。 もうすぐあいつの誕生日。 どう祝ってあげようか…
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